親知らずの抜歯

親知らずの抜歯は一般的な治療の一つですが、外科処置に分類されるため、慎重な対応が求められる治療でもあります。特に、親知らずの近くに重要な血管や神経が通っている場合、これらを誤って傷つけると多量の出血や一時的な麻痺などのリスクが生じる可能性があります。そのため、抜歯前には正確な診査・診断が必要不可欠です。

一般的には二次元のレントゲン撮影を用いて診断を行いますが、当院では三次元立体画像が得られるCTを使用しています。CTは従来の二次元レントゲンと比較して、神経や血管の位置をより正確に把握することが可能です。

親知らずの抜歯は痛いというイメージを持たれる方は多いかと思います。当院では、できるだけ痛みを軽くするために「テルプラグ」を使用しています。

テルプラグ

テルプラグは、親知らずを抜歯した際に使用されるコラーゲン製の止血剤で、抜歯後の治癒をサポートする重要な役割を果たします。テルプラグを抜歯後にできる穴（抜歯窩）に詰めることで、血液の凝固を促進し、迅速な止血を助けます。これにより、出血を抑えるだけでなく、傷口を保護する働きもあります。

水平埋伏歯

水平埋伏歯とは、歯が横向きに埋まっている状態のことを指します。このような歯は通常のまっすぐ生えている歯と比べて抜歯が難しく、高度な技術が必要です。特に親知らずでよく見られるケースで、抜歯には慎重な対応が求められます。

水平埋伏歯の抜歯では、まず歯茎を切開してめくりあげ、埋まっている歯を露出させます。その後、専用の器具を使って歯の頭の部分（歯冠）や周囲の骨を少しずつ削り取り、さらに歯を分割して少しずつ取り除いていきます。

妊娠中はホルモンバランスや体調の変化により、親知らずが腫れやすくなる傾向があります。また、妊娠中の親知らず治療には、使用できる薬や処置内容に制約があるため、治療が難しくなるケースも少なくありません。

特に、生え方が悪い親知らずがある場合、炎症を起こして痛みが出るリスクが高まります。そのため、妊娠を予定している方や妊娠初期の段階で、親知らずの状態を確認し、必要であれば事前に抜歯しておくことをおすすめします。

親知らずの抜歯は上下左右を均等にする必要がありますか？

必ずしも両方を抜歯する必要はありませんが、痛みの原因が「歯並びの悪さ」「清掃不良」「虫歯の進行」など共通している場合、反対側も同様のリスクを抱えている可能性はあります。「抜くべきか迷う」「他の歯への影響が心配」といった不安がある方は、ぜひご相談ください。

親知らずと歯並びに関係性はありますか？

横向きや斜めに生えた親知らずは、隣の歯を押す力が加わることで歯列全体に悪影響を及ぼす可能性があります。

どんな親知らずでも抜歯可能ですか？

ほとんどの親知らずの抜歯に対応していますが、以下のような特別なケースでは、大学病院などの高度な専門性を持つ医療機関への紹介が必要になる場合があります。

具体的には、心臓病や糖尿病などの全身的なリスクが高い方、極度の歯科恐怖症で全身麻酔が必要な方、また抜歯によって神経や血管を損傷する可能性が高い方などが該当します。